bunty's blog

ググったこととか勉強したことのメモ

「Phantom」を読んだ

Tiktokで紹介されていて、興味を持ったので読んでみた。内容についてはこちら。

外資系食料品メーカーの事務職として働く元地下アイドルの華美は、 生活費を切り詰め株に投資することで、 給与収入と同じ配当を生む分身(システム)の構築を目論んでいる。 恋人の直幸は「使わないお金は死んでいる」と華美を笑うが、 とある人物率いるオンラインコミュニティ活動にのめり込んでゆく。 そのアップデートされた物々交換の世界は、 マネーゲームに明け暮れる現代の金融システムを乗り越えゆくのだ、と。

やがて会員たちと集団生活を始めた直幸を取り戻すべく、 華美は《分身》の力を使おうとするのだが……。 金に近づけば、死に近づく。 高度に発達した資本主義、その欠陥を衝くように生まれる新たな幻影。 羽田圭介の新たな代表作。

自分も株式投資も行っているので、無駄な出費を抑えて株に回したい気持ちはすごくわかるし、オンラインサロンにも入っていたり、何か自分のためにお金を使うことが重要なのもわかる。 どちらの気持ちもわかると思ったので、どちらの目線でも楽しめそうで面白そうに感じた。

読んでみて考えたこと

お金を稼いで何をしたいのか?

特に彼女が作ろうとしている配当金のシステムは、5000万円を貯めてそれを運用することで毎年250万円ほど稼ぐというものだった。 自動でお金が入ってくる仕組みというのはすごく魅力的だなと自分も思っている。

彼女の方が投資で成功している人たちに会うシーンがあった。 その人たちは投資で成功してお金がたくさんあるけど、それでもまだ節約をしていてあまり身なりも良くない。 その人たちを見て、自動でお金が入ってきても、なんだ生活保護と変わらないじゃないかという心理描写があり、そこがすごく印象的だった。

確かに仮に毎年お金が自動で入ってくるというところだけ見ると、生活保護も同じといえば同じ。

確かに何年もかけて自動でお金が入ってくる仕組みを作ったとして、それで何をやりたいんだろう?
将来お金をたくさん手に入れるために、今の時間を使いすぎることは良いのだろうか?
仮に将来お金を手に入れた時によかったと思うのだろうか?

その時にはお金よりも時間の方が欲しいと思っているのではないかと思ってしまう。
余った時間、余ったお金で将来のためになりそうなことをやるのは良いと思うのだけども、今の時間やお金をほとんど使ってまで将来のために投資することは自分はしないようにしようと思った。

お金の価値

これに関してはざっくりと 2 つあると思っている。

1 つは使ったときに発生する価値。
これは旅行に行って普段できない経験ができたり、美味しい食べ物を食べて満足感を味わったり、便利なものを買って自分の時間が多くできたりなど。 この価値はもちろん使うまでは発生しないので、将来のためにお金を貯金するだけではこの価値を得ることはできない。

2 つめは持っている価値。
一定のお金を持っていれば安心感が得られると思っていて、仮に病気になったとしてもお金で困ることはないなとか、コロナのような想定外のことが起こったらどうしようと将来について不安を感じることは少なくなると思う。 何かに挑戦するときにも、一定期間お金が稼げなくても暮らしていけるので、お金を持っているということが何か挑戦をすることの後押しになることもある。

貯めれば貯めるほど、2 の価値は増えていくが、ここを目的にしてしまうと 1 の価値を得ることができなくなる。 今回の話は、女性の方がもともと 2 の価値を重視していたが、パートナーを助けるために大金を使うことで 1 に価値を感じるようになっていた。

将来お金によりもたらされるであろうと予想された効用は、どこまでいっても実体のない、頭の中の可能性でしかなかった。それが思いきって使うことで、今そのものになった。


現在一六五〇万円ほどの自分の金融資産を将来的に五〇〇〇万円まで、あるいは無限に増やしたいと思ういっぽう、生きているうちにそれをゼロにしたいという欲望も強く感じていることに気づいた。

自分の場合は、意識をしないとただ貯めることを優先してしまう気がしている。だからこそ自分は意識をして使うべきときにお金を使えるようになりたいと思った。

終わりに

お金の使い方、時間の使い方について考える良い機会だった。 お金はすごく重要ではあるが、それを目的にしてしまうのはよくないのだと思う。あくまで手段として割り切る必要があるし、お金を稼ぐために失うものにも目を向ける必要がある。

これがリアルなのかもしれないけど、二人とも工場勤務で年収が200万円台だった。 単純にお金を稼ごうと思ったら、年収を上げる方が手っ取り早い気がした。ただこの考えは、無意識に自分が関わってきた人たちや社会を前提に考えてしまっているなと思った。

自分はずっと東京にいるので、仕事はたくさんあるしいくらでも転職ができる。 例えば地方の田舎の方にいくと、あまり仕事の選択肢が無かったりそもそも高い年収の仕事がないところもあると思う。 無意識に自分の前提条件の上で物事を考えてしまうのはよくない。 ちょっと前に「他者と働く」を読んで、相手のナラティブで考えるという話が出てきたので、そんなことを考えた。

dhate.hatenablog.com

最後の方で彼女の方の心理描写。

紫外線を避けること以上の究極のアンチエイジングは、今を生きるということだ。今を未来に先送りしても、その未来でなにもやらないのなら、意味がない。今やっていることは、今しかできないことだった。

お金の話を多く書いたが、この小説としては「今を生きる」ということが 1 つメッセージになっているのだと思う。 結局お金の話も突き詰めると、今のために使うのか将来のために残しておくのかということになる。 将来のために使わないでいた彼女が、今のために使う変化を通じてこのメッセージを残したのだと思う。